いつの日か 世界は 共に 歩む ( キュウゾウ編 ) 

第一話 「理想の強さ」



その日久蔵はいつも行っているゲームセンターに来ていた。

今日は土曜日。会社も休みなので道場にでも行こうと支度をしていると、顔なじみのゲームセンターの店長から、

最新型のヴァーチャルシミュレーションが入ったという連絡を受け興味津々でやって来たのだ。

店長「電話で言ったように、このマシンでお前さんの作ったPSUのキャラとヴァーチャル対戦できるぜ」

久蔵「それは楽しみだ。では早速始めたいな」


このヴァーチャルマシンはPSUその他のゲームで作成したキャラと仮想空間で戦闘できる装置だ。

以前より久蔵はPSUで自分が作成したキャラ「キュウゾウ」と闘いたいと思っていた。

イメージの中のキュウゾウ、それは最強のサムライ。

そのサムライと闘えると思うとワクワクしてしょうがなかった。

幼い頃より剣道を学び、高校の時には全国クラスの腕前で知られていた。

それから6年、今でも日々の鍛錬は怠っていない。

剣に対してはどこまでも純粋なのだ。


店長「レベル設定が1~5まであるんだが、どうするかい?お前ならレベル4でもいけるだろうがな」

この店長今ではゲームセンターの店長だが、昔は柔道をやっていて体は筋肉質でいかにも体育会系然としている。

すこしいかつい顔をしているが、中身も多少豪快なところがある。

だが、どちらかと言えば無口なほうの久蔵とはなぜかウマが合い、たまに酒を飲みに行ったりと付き合いがある。


久蔵「いや、最高レベルで頼む」

店長「おいおい、いきなりか。レベル5はプロレベルだぞ」

久蔵「かまわない。最強でなくては意味がない」

店長「わかった。だが気をつけろよ。ヴァーチャルだと言っても多少の痛みはあるんだからな。」


ヴァーチャル空間が展開される部屋へと入って準備を始める。

久蔵「武器は刀」

久蔵の手に刀の感触と重さが加わる。

ヴゥゥゥーーーン

一瞬にして景色が、雰囲気さえ変化した。


風が心地よく髪をなでる。

空は青く、微かに緑の香が舞う草原。

そしてキュウゾウが目の前にいる。

正に久蔵が描いていたイメージにピッタリだ。

その存在感と威圧感はとてもゲームだとは思えないほどに。

久蔵「おもしろい」

剣を中段に構え、相手を見据える。

キュウゾウが消えた!!

そう思った瞬間久蔵の横を疾風が駆け抜ける。

久蔵「ぐっ」

久蔵の体は横一閃に斬られていた。

いや、ヴァーチャルなので実際には斬られていないが、久蔵にはそう感じられた。

その生々しい感触にゾッとし、また一つの現実を思い起こす。

「今の動きが全く見えなかった・・・・」

今まで剣道の試合でもここまでの動きを見せる者はいなかった。

「強い・・・」

つぶやきながら、一方で嬉しさが込みあげてくる。

「このキュウゾウに勝てれば、剣の道が見えるはず」


この様子を外から管理用画面で見ていた店長も驚きを隠せなかった。

店長「こんなレベル設定あったか?・・・こんなの誰も勝てんぞ」

それもそのはず、今この時はこのマシンの製作会社も想像も出来事が起こっているのだ。


店長「やっぱりレベルを下げよう。これは尋常じゃないぞ」

久蔵「いや、これでいい!!このままやらせてくれ。もう一度だ!!」

キュウゾウの強さに惹かれた久蔵は、その日から会社が終わるとこのゲームセンターにきて時間の許す限り

キュウゾウと闘いを繰り返していく。




半年後

キュウゾウの動きが見えるようになり、3合はもつようになっていた。

だが何合もったとしても、キュウゾウを斬れるというイメージが全く沸いてこない。

今はまだガムシャラにキュウゾウの剣に対処するので精一杯な状態である。


普通ゲームのキャラはやはり決まった動きしかしてこない。

当然ながらその動きのプログラムは人間が作ったものだからだ。

だがキュウゾウは違った。

その動きは変幻自在。両手に持った2刀を順手、逆手に自在に持ち変え、容赦ない斬撃。

動きも正に意思を持ったように捉えどころがない。

もちろん型はある。まったく別人のような動きにはならないが、読めない。

つまりはゲームにあるようなパターンを読んでの攻撃、カウンターは全く通用しなかった。


キュウゾウに身体能力で勝つことは不可能だ。

たしかに、グラールの人間は現実の人間の身体能力を遥かに凌駕している。

だが久蔵は日本の剣術が通用しないとは思っていない。

力に頼らず、己だけでなく相手も包みこむような、心を澄みきらせたそんな境地の剣。

肉体ではなく精神。

そこにこそ、いやそこにしか勝機がないと久蔵は気づき始めていた。



「片手でオレの刀が簡単に弾かれるとは」

またあっさりと斬られ、今の闘いを思い一人ごちる。

「腕力で弾かれてるとは思えない、やっぱり技なんだろう」

「どうやっていた?・・・思い出せ・・・・」

そうやって久蔵は一日一日キュウゾウの剣の軌跡を追って強くなっていく。





一年後

一礼をし、剣を構える。

ホントにキュウゾウは生きてるんじゃないんだろうか、最近はそう思えてきた。

剣を交えるごとにキュウゾウの心が伝わってくるような気がしている。

そんなことはありえないはずなのに。


この頃から久蔵は一日に一回しか闘わなくなった。

それは負けたらもう一度という考え方は甘えだと気づいたからだ。

実戦において2度目はない。

この闘いに己の全てを懸ける。そういう思いがないとキュウゾウに勝つことなど永久にないのだと。


一度の闘いだけのため無茶な突っ込みはしなくなった。

無駄な動きがなくなり相手の動きを見、確実に倒せる一瞬を見出し、斬る。

それでも、まだわずかにキュウゾウが速い。

だが、この一年毎日キュウゾウと闘ったことにより、闘い方、剣の心というものを深く吸収していった

久蔵の実力はもはやキュウゾウに肉薄していると言って過言ではないほどに成長している。




この日久蔵は朝不思議な感覚で眼が覚めた。

だれかに呼ばれているような、そこに行かねばならないという思いに駆り立てられる。

ゲームセンターに着いてすぐヴァーチャルルームに駆け込み、いつものように起動させキュウゾウが現れるのを待った。


現れたキュウゾウはいつもと変わりはない様に思える。

だが、なんとなくだが感じていた。キュウゾウとの闘いは今日が最後だと。

ならばこの場にすべてを懸ける。この一年の感謝とともに。

その思いが久蔵にかつてない集中力をもたらした。

久蔵の頭の中は澄み切っている。


一礼をし、剣を構える。

今の久蔵は剣が自分の一部と思えるほど剣先にまで気が行きわたっている。

そしてその時2人の剣が一本の閃光で繋がった。

その瞬間一切に音、色は消え、だた2人だけの静寂の世界が展開された。




一瞬だが永遠とも思えるほどゆっくり感じられた瞬間だった。

2人同時に踏み込み、2人の剣が交差する。

光が弾けた・・・


ガクッと膝をつく久蔵。左肩にわずかだが斬り傷がある。

一方のキュウゾウは左肩から右脇腹にかけて斬られていた。

あの瞬間一瞬速く久蔵の剣がキュウゾウを袈裟斬りにしたていたため、キュウゾウの剣は久蔵を斬るには至らなかったのだ。

久蔵はあのキュウゾウを斬ったという手ごたえを感じながら、まだ信じられなかった。

久蔵「キュウゾウに勝った?」

自分の剣を見、そしてキュウゾウを見上げる。

久蔵が見たキュウゾウはどこか満足したような顔だった。

キュウゾウ「よくぞここまで」

そう言ったキュウゾウはかすかに笑って見えた。

久蔵「キュウゾウ!?」

キュウゾウがしゃべったことに対し多少の驚きはあったが、キュウゾウは生きているのではと思っていた久蔵は素直に今の言葉を受け止めた。

だが、今起こってる現象に対しては頭がパニックになっている。

そしてキュウゾウはどこからか一振りの剣を取り出し、久蔵に前に差し出した。

どういうことかよくわからないまま、久蔵はその剣に手を伸ばす。

キュウゾウ「すまない。世界を、頼む」

久蔵「なに?それはどういう」

その一振りの剣を受け取った瞬間久蔵は光に包まれた。

続く  

次回「携えしその刀、その名は・・・」
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by kyuzou3190 | 2007-12-25 19:10 | PSU小説